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さようならフリッパーズ・バッヂ

 前回の記事(The 1975のフォロワー特集)でも軽く触れた通り、わたしはかつて渋谷系キッズだった頃にフリッパーズ・ギターのフォロワー・バンド、いわゆる「パチフリ」を熱心に聴き漁っていた時期がある(というか妄信的に好きなバンドを忠実に再現してくれるバンドはだいたい好き)のですが、せっかくなのでそれらをつらつらと列挙してみようと思います。

 

1. Tetrapletrap

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 前回のChase Atlantic同様、とりあえずいちばん露骨な奴から。はい、まんまですね。あまりにまんますぎてなんも言えませんね。この曲が入ってるミニ・アルバムは全曲この調子です。他人の褌で相撲取りすぎ。

 彼らの面白いところは音楽だけでなくインタビューでの発言も徹底的にフリッパーズを模倣し、「(ボーカルの川島が)交通事故に遭ったときにメンバーが減って自分たち2人になった」「友情で音楽をやってるわけじゃない」と言ってみたり、体育会系的なパンク・バンドへのコンプレックスを覗かせたりするところ(その肝心のインタビューがネットから消えてしまっているようなので残念ながらソースを提示できないのですが……)。

 で、音楽に話を戻すと、さっき貼った「Vector」でも充分笑えると思うのですが、興味を持った方はぜひ中古レコ屋で「Summertime Location」というシングルを買ってみてください。彼らの本気はこんなもんじゃないので(むしろこんなものであって欲しかった)

 ちなみにボーカルの川島さんはのちにパンダのジェームズ・パンダ・ジュニアとして藤岡みなみさんとユニットPanda 1/2を結成。

 

2. Roboshop Mania

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 うむ、ダサい。ダサいぞ(いや好きなんだけどね)

 Cymbalsと同じくらいの時期にLD&Kからインディーズ・デビュー、のちにToy's Factoryからメジャー進出を果たす2人組。2人組でルーツはネオアコソフト・ロック、ボーカルは舌ったらずなショタ風ボイスとまあかなりわかりやすーいフリッパーズワナビーなのですが、いかんせんめちゃくちゃダサい。Youtubeにある彼ら出演のテレビ番組「Rock The Roots」は絶対に観るな。

 

3. Round Table

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 たぶんこの手のアーティストではかなりの出世頭なのではないでしょうか。アニメ好きにはゲスト・ボーカルを迎えたRound Table feat. Nino名義での活動や、中心人物の北川勝利氏のアニソン方面での活躍及び強烈なインパクトを残すエゴサ&クソリプでもおなじみのはず。

 というか実はわたしが渋谷系を聴くようになったきっかけがそのRound Table feat. Ninoの「パズル」なのです。

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 で、彼らはパチフリの筆頭として名前を挙げられがちですが、正直そこまで似てないような……。いやまあ比べたくなる気持ちは充分わかるのだけれど、北川さんのボーカルにあまりにも平熱感がありすぎるので……(まあそこがまた好きではあるのですが)

 

4. Electric Glass Balloon

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 ほんとうはある意味渋谷系史に残る迷曲である「Wrist Cut 100 〜手首を切る100の方法〜」を貼りたいところなんですがねー……(これ、残念ながら実在する曲名ですからね。念のため)

 基本的には先ほど貼った「Porno Machine」を聴けばわかる通り、少年的な衝動と疾走感に満ちたUK直系のギター・ポップを鳴らすバンドなのですが、MIDIからリリースしたメジャー・デビュー・アルバム「Strikes Back」は恐らく皮肉混じりにフリッパーズを模倣した作品となっています。キュートなジャケット、ボーカルの杉浦さんの舌ったらずでやぶれかぶれなボーカル、そしてとどめが「Wrist Cut 100」という曲名やアルバム終盤で見せる「ヘッド博士の世界塔」的なサンプリングを交えた似非マッドチェスター・サウンド。かなり笑えます。しかもインタビューでは「だろうだろうはもういいだろう」と明らかにフリッパーズへの当てつけのような発言をしてみたり。その姿勢や楽曲のよさに惚れ込んで以来、ずっといちばん好きな渋谷系バンドです。

 ちなみに彼らは現役時代はライブがかなり下手なことで有名だったようなのですが、わたしが数年前に観た最初で最後の再結成ライブもかなり強烈な下手さでした。全曲音源より遅いし、ギターはなぜか終始ハウってるし……。最高でした(信者並みの感想)

 

5. サニーデイ・サービス

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 うん、そうだよ。あのサニーデイ・サービスだよ。

 Under Flower傘下のGiant Robot Recordsでのインディーズ・デビューからMIDIでのメジャー・デビュー直後までは実はポスト「ヘッド博士」的なフリッパーズ・フォロワーだった彼ら。サンプリングや打ち込みを交えた似非マッドチェスター・サウンドやあまりにも若々しい曽我部さんのボーカルが少し気恥ずかしくていい感じ(?) 一方でのちに活きてくるフォーク・ロックやシティ・ポップ、歌謡曲の影響も既に垣間見えるのが興味深いところ。

 ちなみに曽我部さんはインディーズ・デビュー・アルバム「Super Disco」リリース時に大学の後輩たちを取っ捕まえては「1人3枚は買え」と脅していたそうな。その「Super Disco」、MTR宅録されたものなので音が極悪です(ジャニスでレンタルできるので気になった方はぜひチェックを)。これを3枚買わされる後輩たちの身になって欲しいものである。

 

6. Pete

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 知名度がかなり低そうですが個人的には大好きなバンド。実は世のパチフリたちではいちばん小山田さんと歌い方が似ているのでは。恐らくこの動画を投稿してくださった方もその辺りを意識して背景画像をお選びになったのでしょうね。

 ボーカルも歌詞も徹底的にフリッパーズの出来損ないみたいな感じですが、楽曲は全体的に意外としっかりつくられていて、サウンドもざっくりした歪みがいい感じでネオアコというよりはブリットポップ的な趣き。あとアルバムのアートワークもなかなか洒落てて侮りがたいです。

 

7. クラックポット

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 で、そのPeteのボーカルだった稲田さんがPete解散後に結成したのがこのクラックポット。前バンドでギター・ポップ→新バンドでフリー・ソウルという流れが小山田圭吾と完全に一緒。どこまで本家に寄せれば気が済むというのだろう……。

 でもこれがまた地味ながら侮りがたいバンド。当時は「ゾンビ化したフリッパーズ・ギター」とかなんとかいうキャッチコピーで売り出していたようですが(ヤバい)、どちらかというとCorneliusの1stを鬱っぽくした感じだと思います。Great 3の「Romance」と並んでメンヘラのための渋谷系名盤だと言えるのではないでしょうか。

 

8. Harvest

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 これもまた一時期ドハマりしていたバンド。サンプリングや打ち込みを駆使したスタイリッシュでダンサブルなサウンド、アルバムを通して垣間見える60年代サイケ・ポップの影響などに「ヘッド博士」と通じる匂いを感じます。また、ボーカルがV系上がりらしく、そのせいか小山田的な舌ったらずで甘い歌い方のなかにもそれらしい歌い回しが散見されるのが興味深いです。

 で、このバンドめっちゃよくない? ソングライティングもサウンドも上質だし、歌詞もいいし、ボーカルも好みは分かれそうですが個人的には大好きだし、ほんとうに過小評価されている気がしてならない……。

 

9. Lab Life

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 どういうわけかフリッパーズネオアコ・サウンドとニュー・ウェーブ/シンセ・ポップをかけ合わせるバンドは世の中に一定数いるようで、このLab Lifeもそのなかのひとつ。とりわけその感覚が強いのがこちらの曲ではないでしょうか。聴いての通りボーカルの大谷さんの非常に小山田チックなボーカルが印象的で、本人もかなりそのことを気にしていたのか、ライブで「二度とやらないからね」と断った上でフリッパーズのカバーをしたこともあるとか。

 余談ですがこの曲が入っているアルバムはなぜか就職活動で苦しんでいた時期にやたら聴いていたので聴く気があまり起きません……。

 

10. Nice Music

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 こちらもフリッパーズとシンセ・ポップの融合といった趣きの2人組ユニット。チープな打ち込みもいまとなってはかえって味わい深くていい感じなのではないでしょうか。ただいかんせん歌詞がめっちゃくちゃダサい……。

 この曲が入ったアルバムもなぜか就職活動で苦しんでいた時期にやたら聴いていました。なぜ……。

 

11. Coaltar Of The Deepers

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 このリストに入れちゃうとその筋の人(主にFor Tracy Hydeのギターとベース)にめっちゃ怒られそうな気がしないでもないのですが、実際似てるものは似てるししゃーないやん……。正直Narasakiさんの声は下手なパチフリ以上に小山田さんに似ている気がします。

 

12. Spiral Life

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 これもこのリストに入れるとその筋の人たち(リアルタイムで渋谷系を聴いていらしたガチのその筋の方々)に怒られそうな気がしますが、実際問題として

・2人組で

・90年代に活動していて

・60年代サイケ・ポップとマッドチェスターに影響を受けていて

・歌詞がシニカルでありながらロマンチックで

・アートワーク等のヴィジュアル面にもこだわりがある

バンドがフリッパーズと比べられてしまうのはしかたがないのでは……。

 For Tracy HydeSpiral Lifeにほんとうに多大な影響を受けている、というのは声を大にして言い続けたい。

 

13. Marmalade Sky

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 パチフリとまで言っていいのか微妙なラインではあるけれど、明らかにフリッパーズ以降の線の細いボーカルとシニカルな詞世界が魅力の2人組ネオアコ・ユニット。枯れ気味のサウンドが個人的にストライクど真ん中で、彼らの1st EPは大学時代から長きに渡って愛聴しています。ほんとうに素晴らしい作品なのでもっと広く知られて欲しいところなのですが、あまり世に出回っていないのか中古屋でもまったく見かけません。興味のある方はわたしに言ってくださればお貸しします(知人限定)。

 一方1st EPに負けず劣らずレアな2nd EPはなにひとついいところのない駄作で、ほんとうにあの素晴らしい1st EPを出したのと同じバンドか疑ってしまうレベルです。あまり世に出回ってなくてよかった……。

 

14. Boys & GIrls Together

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 最後は10人中10人が認めるであろうパチフリのなかのパチフリを貼って締めます。完全に1st期のフリッパーズですね。こんなに爽やかな曲なのにあまりにフリッパーズすぎて逆にもやもやしてしまうというねじれ現象。

 

 以上、パチフリ特集いかがだったでしょうか。少しでもこの世界(?)に興味を持たれた方は、ぜひなにからなにまで間違いだらけの渋谷系ディスク・ガイドとしてこの記事を片手に中古屋さんをさまよってみてください。