死ぬまでにいちど女の子と指切りをしてみたい。

 なんだ、そんなことを、とあなたは思われるかもしれないけれど、よく考えてみていただきたい。

 指切りをするにはその前提条件となる約束が必要だ。指切りという行為は約束の強要であり、小指を介した言語と倫理による束縛にほかならないのだ。いったいいかなる権利をもってわたしなんかがあなたがたに約束を強いることができるというのだろう。

 

 とはいえ、そんなことでいちいち深く考え込んだりしない子どもの時分にはさすがに女の子と指切りをしたことがある(なんなら100回でも200回でもしたことがあるかもしれない)。でもそれはまた違う話だ。子どもはある意味では未分化な存在で、幼少期の男の子はいわゆる「男の子」ではないし、幼少期の女の子はいわゆる「女の子」ではない。わたしの言う「男の子」と「女の子」はもっと青くて気恥ずかしく、そしてどうしようもなく心も体も隔てられているなにかだ。

 

 だからこそわたしは「男の子」として、「女の子」であるあなたと、指切りをしてみたいと思う。